チチカカ湖と言えば、「トトラと呼ばれる葦で作られた舟とトトラで作られた浮島に住む人々」というイメージがあります。これは、「世界ふしぎ発見」などのTV番組を見て育った日本人だけでなく、世界中の人々も同じイメージを抱いているらしく、トトラの浮島観光は大盛況です。チチカカ湖イコール、ウロスの浮島観光と言っても良いかもしれません。
ウロス島の人々は、インカ時代の賤民だとか、スペイン人に追われたからとか、漁業がしやすいために浮島に暮らすようになったとか言われているけれど、今や観光テーマパークと何ら変わらず、観光ガイドの仕事で何度か訪れたときもあまり良いイメージは持てませんでした。
プーノの観光業者、ひいてはペルーの観光協会にとっても彼らが今の生活をやめて陸での生活を選ばれては困るのです。浮島の住民は漁業をしていることになっているけど、彼らは観光業に忙しく漁業などしてる暇はありません。
大体、プーノ近郊は水深も浅く人口が密集しているのでチチカカ湖で最も汚染のひどい地域です。水質に敏感なトゥルーチャ(ニジマス)が近くで獲れるはずもありません。漁業者はもっと水質の良いエリアで養殖しています。
観光業者と持ちつ持たれつ、いや、飼いならされたような関係で、ウロス島の人々は電気もガスもない生活をしているのが現状です。大昔、漁業をやっていた時よりは生活は楽かもしれません。現金収入のために、観光客向けに浮島生活を演じ続ける人々。
愛想よく観光客の向けるカメラに笑顔を振りまきおみやげ物を売る人々。こんなことで良いのだろうかと複雑な気分でいました。
若かりし頃そういう目で見ていたので、今回はウロス島は行かずにパスしようとずっと思っていました。昨日の夜まで行かないと思っていました。
ですが、今朝になって21年ぶりのウロス島はどうなっているのか、もう二度と来れないかもしれない、せっかくここまで来たのだから見ておいた方が良いのではと思い直しました。
今回行って見ると、観光客向けにちょっと改良されていたことがありました。観光客向けのトトラの舟のほとんどが二艘式の筏のような舟に変わっていました。昔は一掃式が主流でした。
確かに一艘式のトトラの葦舟は不安定そうに見えるのでしょう、お客さんによっては怖がって乗りたくないというケースもありました。二艘式にしたことでスピードも操作性もがた落ちのトトラの葦舟ですが、これでどんな観光客も安心して乗れそうです。
行って見た感想ですが、私が年を取ったからでしょうか、ウロス島で生活する人に一観光客がとやかく意見を言う問題でもないのかな、と思い直しました。彼らは不便でも安定した生活が送れています。
大昔から浮島で暮らしてきたのです。仮に政府がプーノ郊外に集合住宅を作って移住させたとしても、 急激に生活スタイルを変えれば、馴染めずにストレスで病気になる人も出てくるかもしれません。
ウロス島は、あれはあれで良いのではないかと思えてきました。
同じところへ行っても、年齢を重ねると感じ方も変わって来るものだなと自分でもびっくりしました。自分の中の変化を体験できたのも、ウロス島へ行ってみたからです。今回は、行って本当に良かったと思います。
午後はプーノ市街を散策。セントロは歩いて回るのに丁度良い大きさ。夜はダウンジャケットが必要なほど冷え込むのに、日中はTシャツで歩けるほど暖かいです。チョリータさんのかぶる帽子がラパスなどで多く見かける山高帽に変わってきました。
夕食はアンティクーチョ(串焼肉)をテイクアウトしました。これもペルーの代表的な料理です。それと、アボガドのワサビ醤油。明日はいよいよペルーからボリビアへ国境を越えていきます。
けんいち、ウロス島の人たちは陸から通勤しているって聞いたよ。