▼ 滝野沢優子の「ぐるり東南アジア3カ国・タイカブツーリング」その10
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聖地チャイテイヨーから北へ向かいます。次なる目的地は高原の景勝地・イン
レー湖です。インレー湖へ向かう途中、バスの乗り換えのついでに宿泊した、
バゴーという町で、ある”できごと”がありました。
バゴーで宿泊したホテルの向かいの路上には、バスチケットやバイクタクシー
を手配する店がありました。机を1つ出しただけの店の横には、そこのオーナ
ーらしい、押しの強そうなガタイのいい男がヒマそうに立っていました。
私たちが何気なくその前を通りがかったとき、
「アイツだ! 間違いない」
と、けんいちにしては珍しく語気を荒げてつぶやきました。
実は夫のけんいち、15年前に一人でミャンマーを旅して、やはりこの町に1泊
したそうです。まだ強制両替がある時代で、公定レートよりも闇レートのほう
がずっとレートがいいので、旅行者は路上で両替するのが普通だったそうです。
用心深い我が夫のけんいち。滅多なことでは騙されないのに、ここバゴーで不
覚にも両替詐欺に遭ったことを、ずっと悔しがっていました。
奇遇にもその相手に再会してしまったのです。
けんいちのほうは会った瞬間に顔を思い出したのに、その男はまったく覚えて
ない様子で、バイクタクシーの営業をしてきます。ヤツにとっては日常茶飯事
だったのでしょう、いちいち相手の顔を覚えているはずもありません。
闇両替がなくなった現在、ヤツは一応マトモな商売をしているようでした。
まさか15年ぶりにまたヤツに出会うとは…。
さらに、宿で手配してもらったバスターミナルまでのタクシーが、なんと!
ヤツのバイクタクシーでした!
けんいちは、奇しくも15年ぶりに出会った詐欺相手の後ろに乗る羽目になって
しまったのでした。
▲ピッタインダウンと呼ばれるミャンマーのダルマ、押すたびに起きるという意味だそうです
その後、冷房の効きすぎるバスでインレー湖へ向かいます。
インレー湖は標高900mの高原にあり、一帯は風光明媚な観光地です。ミャンマ
ー旅行のツアーには必ず組み込まれている場所ですが、ミャンマーは激増する
観光客に対応しきれず、宿泊施設が不足気味です。インレー湖周辺はとくにひ
どく、私たちが泊まるレベルのゲストハウスにまでツアー客が押し寄せていま
す。そのため、夕方には宿はどこも満室でした。そのような状況のため宿は強
気です。料金も高めで、とても値下げの交渉などできません。
「空いていたら、ラッキー♪」という状況であるため、時には食堂や寺院の空
きスペースを有料(20ドルくらい)で開放することもあるそうです。
ここでも、タクシーをチャーターしたり、ツアーに参加するのがイヤな私たち
は、宿で自転車を借りて湖周辺をフラフラと走り回りました。
▲インレー湖畔の町、ニャウンシュエの尼僧さん
▲小坊主さんにお弁当箱の写真撮らせて、と頼んだら照れてしまいました
ローカルな集落を訪れたり、温泉に入ったり、小さなボートに自転車を乗せて
湖を渡ったり…。途中、自転車の変速機が壊れるといったトラブルもありまし
たが、ほんのちょっと押していけば修理してくれる店が見つかります。バイク
で入国できないのであれば、自転車で旅するのも良いかもしれません。欧米人
にはインレー湖周辺のトレッキングも人気のようでした。近い将来、ミャンマ
ーのアウトドアレジャー基地になりそうです。
インレー湖の次は、西へ200kmほどのバガンを訪れました。このバガンは、カ
ンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドゥールとともに世界
三大仏教遺跡のひとつです。広大な平原地帯に3000ともいわれる大小さまざま
な仏教遺跡が林立しています。
私的にはミャンマーでの一番の見どころと思っていましたので、かなり観光地
化されているだろう…と思いきや、まだまだ庶民的な町でホッとひと安心しま
した。
▲パガンの古代遺跡群
パガンはA級の世界遺産に登録されてもおかしくない遺跡ですが、いろいろな
理由で登録されないようです。とてももったいないのですが、世界遺産に登録
されたら観光客が今以上にドドッと訪れ、外国資本もたくさん入って観光開発
され、アッという間に変わってしまいそうな気がします。
▲アマラプラのウー・ベイン橋、長さは1200メ-トル、木造の橋としては世界最長
最後はミャンマー中部の第2の都市、マンダレーからエア・アジアの1時間余り
のフライトでタイのバンコクへ。1月7日に入国してから2週間ほどのバックパ
ッカー旅も1月22日に無事終えることができました。
バイク旅の合間に、このような目線を変えて旅をしてみることも変化があって
良いものでしたし、改めてバイク旅の良さを実感しました。
さて、次回からはタイカブツーリングを再スタートさせます。次なる目的地は
国境越えて、タイの東隣の国ラオスへと向かいます。
無事にラオスへ入国できるのか、ドキドキです。
来週に続く。
※ミャンマーの旅の様子は、ホームページ「ぽこけん」のブログでもレポート
しています。画像や動画もありますのでぜひご覧ください!
●バゴー
http://c.bme.jp/35/3/1968/520416
●インレー湖
http://c.bme.jp/35/3/1969/520416
●バガン
http://c.bme.jp/35/3/1970/520416
●マンダレー
http://c.bme.jp/35/3/1971/520416
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週刊連載コラム、第91回はいかがでしたでしょうか。
ヤンゴンから出発し、聖地チャイテイヨー、インレー湖、仏教遺跡バガンと巡
りマンダレーで終了した滝野沢さんのミャンマー・バックパッカー旅。きっと
滝野沢さんの記憶にたくさんの「ミャンマーの現在」が刻まれたことでしょう。
バイクで入国できるようになったら、おそらく滝野沢さんは再度ミャンマーを
訪れるでしょう。その時のミャンマーはどのような状況になっているのでしょ
うか? 滝野沢さん、楽しみですね…!
来週も滝野沢さんのコラムをお楽しみに!